作成日: 9/13/2024, 3:08:52 PM
毎日一冊ずつのペースで本を読んでいたわたしは、大体の物語について忘れてしまいました。 思い返せば、いろいろな味わいの本があった気がします。心象風景を追いかけることをメインにする本や、奇天烈なラストを迎える刺激的な小説も存在します。 そんな中で、私の心を一番に射止めたのは、留まることのない文章の流れが存在する本でした。 例えば、筒井康隆先生の『パプリカ』。途方もない情報量が目の前を流れていく、面白いから目を止めることはできなくてぐんぐん進んでいくが、脳みそが処理をしきれなくて溺れてしまいそうになる。そんな小説でした。 小説は『川下り』に似ている気がします。最終地点のゴールはすでに決まっていて、そこに向かうための流れがあります。ただひたすらに長く続く文章だとどこで目を止めていいのか分からない水でその勢いをそぐために、や。が存在して、わたしたちは息継ぎをすることができるようになります。 有名な小説・小説家には、独特のペースがあり、そのペースとペースメーカーを楽しむためにわたしは本を読んでいます。
インターネットで面白い本を探して、上位のレートから読んでいったわたしは、季節が変わり目を迎えるようにパタリと面白さに出会えなくなりました。インターネットで話題に上がる本なんて、200冊もないのではないでしょうか。インターネットの本レビューは、どのレビューを読んでも同じ本ばかりで、あてにならず、別の言葉で同じ話題を繰り返しているXとあまり変わりがないように思えます。 そんな中、持て余したわたしは『桜庭一樹』先生の読書日記に手を出しました。わたしの知らない世界の本をたくさんレビューしており、赤裸々な読書体験と日常が描かれていました。 そこで出会ったのが、『ラテンアメリカ文学』でした。 ラテンアメリカ文学は、文学と名がついていますが、言葉に埃がかかっておらず、現代の語彙でも非常に読みやすいです。また、『日本文学』の基本である、私小説的ではなく、しみったれた話がなくて、退屈になりづらいです。『文学』という言葉にアレルギーがある人でも楽しめると思います。 特におすすめなのがノーベル文学賞作家である『ガブリエル・ガルシア マルケス』です。『百年の孤独』はAmazonベストセラー1位にもなりました。翻訳家である鼓直さんの訳も非常に魅力的で、読みやすいです。二人の織りなす文字の世界は、建付けがしっかりしており、歩き回ることのできるくらい奥行が広く、まだ見ぬ世界に思いを馳せることができます。非常におすすめです。
チリの近代史について知ることで、ラテンアメリカ文学はより深く楽しむことができるようになります。 チリは、近代の中で、あらゆる政治思想を試した国でした。 まず、『資本主義』がありました。資本主義には、豊かな資本が労働者を必要以上に搾取してしまうという問題があります。チリにはたくさんの鉱山があり、銅、リチウム、硝石等の資源がありますが、国が豊かになることはありませんでした。経営が海外資本だったためです。しかも、チリの鉱山は危険と隣り合わせであり、崩落事故が頻繁に発生し、否定的なニュースは絶えることなく流れ続けていました。国内でフラストレーションが溜まらないわけがありません。 次に、『社会主義』がありました。選挙によって選出された代表が社会主義を掲げることは、大きな抵抗がありました。アジェンデ大統領も、初めは乗り気ではありませんでした。それでも、『社会主義』を選んだのは、チリに存在する豊かな資源を自国に取り戻すためでした。あらゆる資源が、海外資本の手中に収まっている中では、成長することができない。そう考えた大統領は、『社会主義』による強制的な国有化によって、自国の利益になると考えたのです。”国有化”という方法で国民感情に訴えた大統領は、非常に珍しい選挙による『社会主義』を実現しました。 しかし、『社会主義』は上手くいきませんでした。それは、資本主義国家にとっては、どんな手をつかってでも壊さなければいけない思想だったということです。危険思想とレッテルを張られたチリには、貿易をしてくれる国も、助けてくれる国も、食糧生産量を維持する力もありませんでした。海外資本を追い出すことによって、生産方法のノウハウはなくなり、国が上手く回ることはありませんでした。アジェンデ大統領は、海外の援助によるクーデターに倒れました。 次に『軍事独裁体制』がありました。『軍事独裁体制』は一般的に、危険であると考えられることが多いです。海外とは疎遠になり、非難の声が国際社会に響き渡ります。しかし、チリの『軍事独裁体制』は、資本主義国家が敵になることはありませんでした。『社会主義』を打倒した正義の革命であると考えられたためです。『軍事独裁体制』にありがちな”独裁・虐殺”が行われましたが、それでも『社会主義』よりはましであると考えられました。日本もその考えだった国の一つです。国民による選挙によって政権は倒れ、海外資本によって搾取され続ける『資本主義』が戻ってきました。 『資本主義』・『社会主義』・『軍事独裁体制』、そして、『資本主義』と、非常に短期間で政治体制が変わり、利点・欠点を享受しながら前に進みました。チリの歴史は非常に面白くて、本を読む際に、ラテンアメリカの史料を読むのも面白いと思います。
チリの激動の時代に書かれた一冊の本があります。イサベル・アジェンデの『精霊たちの家』です。イサベル・アジェンデは、チリのクーデータに巻き込まれた一人であり、父のいとこは『社会主義』を実現したアジェンデ大統領でした。 イサベル・アジェンデは亡命先で小説を書きあげました。そこには女性目線で激動の時代を生きる人たちと、マジック・リアリズムが交差した生活様式、見事な翻訳による文章の艶があり、最後まで引き込まれて、世界に圧倒されるはずです。
2冊の本を今回は紹介しました。最後まで読んでいただきありがとうございます。
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